- 種名:ニシローランドゴリラ
- 場所:バッファロー動物園(アメリカ合衆国)
- 種類:音楽エンリッチメント
- 目的:音楽の種類の違いによるエンリッチメントとしての効果の差を明らかにする
ヒトの福祉に対して音楽が良い効果を与えることは科学的に知られています。一方、動物に対する効果はあまり調べられておらず、特に音楽の種類による違いはほとんど分かっていません。今回紹介する論文では、ニシローランドゴリラの飼育施設で様々な音楽を再生し、ゴリラの行動に対する影響を調べました。
研究の対象としたのはバッファロー動物園で飼育されているニシローランドゴリラ3個体(オス1個体、メス2個体)です。観察条件は再生する音楽の種類に応じて以下の4条件としました。
- コントロール条件:何も音楽を再生しない
- 環境音楽条件:アフリカの熱帯雨林の音を収録したCDを再生する(リンク先はエンリッチメントに使用したCDです)
- クラシック条件:ショパンのCDを再生する
- ロック条件:MuseのCDを再生する
各条件1日あたり2時間の観察を、週4日間、3週間ずつおこないました。また、音楽自体に慣れてしまうのを防ぐため、各条件の間には1週間のインターバルを設けました。
環境音楽条件では、コントロール条件と比較して吐き戻しが有意に少なくなりました。また、音源の方に頭や体を向ける行動がクラシック条件やロック条件よりもよく観察されました。一方、クラシック条件やロック条件ではコントロール条件に比べて、個体によって毛抜き行動や吐き戻しが多く観察されました。
音楽エンリッチメントが、低コストで効果のあるエンリッチメントになりうることが示されました。ただし、その効果は、再生する音楽の種類によって大きく異なることも確認されました。本研究は対象個体数も少なく、事例報告の域を出ませんが、音楽再生が環境エンリッチメントとして有用である可能性を示しているでしょう。
(小倉匡俊)