エンリッチメント中毒のすすめ – David Shepherdson博士インタビュー –

2015年5月24-28日に国際エンリッチメント会議が開催されました。報告記事についてはこちらをご覧ください(1)(2)

環境エンリッチメントを語るうえでは欠かせない、David Shepherdson博士Oregon動物園・アメリカ・Deputy Conservation Division Manager)に会議中、インタビューをしてきました!

今回の会議の大会長として忙しく立ち回る合間に快く引き受けてくださいました。

①     環境エンリッチメントに興味をもったきっかけはなんですか?

‐ロンドン動物園で環境エンリッチメントの仕事に

もともと動物が好きだったShepherdson博士はSussex大学で生物学を専攻し、動物行動学で学位(博士)を取得しました。

その後、1987年よりイギリスのロンドン動物園で働くことになりますが、そのときの仕事は環境エンリッチメントの推進とその研究でした。動物園で動物福祉にかかわる仕事は当時はイギリスでもほとんどなかったそうです。

それからずっとエンリッチメントに関わる仕事をしています。

ロンドン動物園で3年半働いた後、オレゴン動物園に移ります。それからずっと現在までオレゴン動物園で働いています。

 

②     オレゴン動物園での現在のお仕事を教えてください。

「動物福祉(エンリッチメントと行動)と保全について両方の仕事をしています。」

環境エンリッチメントの推進はもちろんですが、保全の取組にも力を入れているそうです。現在、保全活動としてカリフォルニアコンドル、ウサギ、キツネ類など5-6種を、動物園で繁殖させて野生に返す取組をしているそうです。Shepherdson博士にとって保全と福祉は、野生にいる動物に接するか、動物園の動物とかかわるかということだけで本質的に一緒のことだと捉えているそうです。

 

③     長くたずさわってきたご経験から、当時と比べて現在の環境エンリッチメントの状況はいかがですか?

「ずいぶん変わったよ。まず、そもそも自分がはじめたころはほとんどの人がエンリッチメントを知らなかった。今はみんな知っているからね。」

環境エンリッチメントがほとんど知られていない時代と比べるとずいぶん広まりを見せた状況を喜びながらも、「エンリッチメントには常に改善すべき点はあるし、常に良い方向に改良していくというプロセスには終わりはありません。」と言います。実際にエンリッチメントをすることだけでなく、どう記録して、評価するかということを含めて改善し続ける必要があると言っていました。

 

④     今後どのようなことにフォーカスを当てた活動をしていきますか?

「これまで通り環境エンリッチメントと保全に関する取組を精力的にやっていきたい。」

今回のように、中国など今まで福祉やエンリッチメント活動が少ないところに来るのはとてもやりがいのあることだと言います。国際エンリッチメント会議に関しても、これまでやったことないところでやっていきたいと言うことでした。たとえば、南アメリカ…インド…それからロシア…。次回の会議が楽しみです。

ちなみにShepherdson博士自身は日本に15年ほど前に来られています。

 

⑤     最後に、日本のひとたちに何かメッセージをお願いします。

‐日本のみなさんももっとエンリッチメント中毒に…

「何かすごく効果的な、エンリッチメントを見つけられたとしたら、それはものすごく気持ちがいいことです。もっともっと多くの人にそんな経験をしてほしい。それはドラッグみたいなものです。もちろん良いドラッグ!

それから…日本は霊長類の飼育では世界をリードしているからね、それはほこるべきですよ。」

少し考えたあとに、そんなふうに答えてくれました。

Shepherdson博士のことばの端々からエンリッチメントに対する情熱や動物に対する愛情が感じられました。

オレゴン動物園では、2011年にオレゴンでICEEが開催されたときにはまだ工事中だった、新しいゾウ舎ももうすぐオープンとのこと。常に環境が改良されてゆく、オレゴン動物園にも再び訪れたくなりました。

お忙しい中お時間をとってくださったShepherdson博士にこころよりお礼申し上げます!!

 

(山梨 裕美)

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