Buenos dias!!
ツイッターでも事務局の方からたくさんの実況中継をいたしましたが、5月15日から20日までコロンビア、ボゴタのParque Jaime Duqueで開催されていた、
13th International Conference of Environmental Enrichmentのレポートをいたします。
まずは簡単に、会議の概略を説明します。
今回の会議は6日間の日程で開催され、
1時間の講演、15分の口頭発表、3時間のワークショップで構成されています。
今回は開催国がコロンビアということもあり、コロンビアの他にもブラジルやチリなどを始め多くの南米の方々が参加されていました。
もちろん、ほかの大陸からも参加者はおり、アメリカ、ヨーロッパ諸国、オーストラリア、そして我々日本など多くの国の方が参加されていました。
≪日本から参加の面々≫
さて今回は会議の内容より、主にThe SHAPE of Enrichmentのメンバーにより行われていた、講演の内容を紹介したいと思います。
今回、コロンビア開催の意図として、環境エンリッチメントの技術的な底上げを図りたいという目的もあるためか、
環境エンリッチメントによる効果やAnimal Welfareの考え方やそれぞれの方向性について、たくさんのデータを用いながらわかりやすくお話をされていると感じました。
私が特に印象に残っている講演を手短に…。
≪Robert Young/University of Salford≫
会議を通じて、2講演行われました。
・Future of zoo animal welfare
環境エンリッチメントの実施により、動物自身にどのような効果が得られるのかを新しい技術をもとにした評価方法の提案、(例えば、動物の見た目であったり、テロメアの長さであったり、)
動物福祉の向上により、ストレス耐性も強くなるなど、Animal Welfareの向上による良い点をたくさん紹介。
・Introduction to Zoo animal welfare
特に印象に残っているワードが「Fixed Routine」。
当たり前なようですが、日常の作業手順を変えることが、Animal Welfareや環境エンリッチメントの一番の近道。
問題行動など環境の「貧困さ」に目を向ける指標ではなく、(理解すべきは、ネガティブな行動が出ていない≠いい環境である、ということ)
今後は行動の多様さなど環境の「豊かさ」に目を向ける指標にシフトしていく必要があるのではないか、とのことでした。
≪David Shepherdson/Oregon Zoo≫
動物園動物は自然とかけ離れた場所で生活せざるを得ないが、Animal Welfareを実現するためには、
行動に選択肢を提示する環境エンリッチメントが1つの方策として重要である。
突き詰めるところ、環境の「広さ」ではなく「多様さ・複雑さ」こそが重要である。
アメリカの動物園で飼育するホッキョクグマの研究やゾウの研究では多くのデータから、その影響と関連性を示しておりました。
≪Valerie Hare/The SHAPE of Enrichment≫
・Behavioral management of animal welfare
動物園動物の身体的な能力は、野生動物のそれに比べて衰えやすい。
また同じ環境で生活する動物であっても、人工保育と自然保育の個体では、身体的な能力には差が出てくる。
そこで、環境エンリッチメントにより身体的な能力を鍛えることが、動物園動物にはとても有効となる。
丸太登りやロープの引っ張り合い(Tag of War)など環境エンリッチメントに取り組みたくなるような、事例も多く紹介してくれました。
≪Lance Miller/Brookfield Zoo≫
・Environmental Enrichment to optimize behavioral diversity
「1つのエンリッチメント器具によって多くの行動が引き出される一方で、多くのエンリッチメント器具が1つの行動を引き出すことにつながっている」という、エンリッチメント器具と行動の関係性についても触れ、行動の多様性が広い個体は、血中のコルチゾールが低い傾向にあるということも紹介されていました。
また「ENRICHTRAK App」というアプリについても紹介されていました。
このほかにも、南米(ブラジル)でのエンリッチメントの実施状況や野生復帰に向けた環境エンリッチメントの実施事例、伴侶動物や実験動物に関する環境エンリッチメントの取り組みについても講演がありました。
さて、今回のレポートはここまでとし、次回は口頭発表の様子を紹介したいと思います。
*なお,この海外発表事業は
(公財)山階鳥類研究所 平成29年度山階武彦助成事業に採択され、
実施されました。
京都市動物園
岡部光太