- 対象動物:アジアゾウ (Elephas maximus)
- 場所:スミソニアン動物園(ワシントンD. C.、アメリカ合衆国)
2013年4月に、アメリカの国立動物園である、スミソニアン動物園に行ってきました。スミソニアン動物園は、園内の2つの施設をオランウータンが来園者の頭の上を渡って自由に行き来できるO-Lineや、大型類人猿を対象とした認知研究の展示などが有名です。
たくさんの動物がいるこの動物園ですが、今回は、今年3月にようやく全貌があきらかとなった、新しいアジアゾウの飼育施設Elephant trailの様子をレポートします!
Elephant trailは全部で8943㎡の広さを持ち、7711㎡の屋外施設と、1232㎡の屋内施設に分かれています。
社会行動を含めたゾウの本来の行動を発現できるように、また、ゾウがさまざまな行動を選択できるように、多様な環境を取り入れています。さらに、屋上緑化や浄水施設の水を再利用するなど、施設全体が地球環境に配慮した設計になっています。
屋外施設は7つのエリアに分かれており、エリア間をゾウが自由に移動することで、池や砂地、泥などさまざまなタイプの環境をゾウ自身が必要に応じて選ぶことができます。
各エリアはスライドドアで区切ることもでき、最大で3つの集団が生活できるように設計されています。現在は4個体のゾウが暮らしていますが、将来的にはゾウ本来の社会生態である群れ飼育にしたいとのことでした。
来園者は、上から下からと様々な視点から、ゾウの様子を観察することができます。
エンリッチメントとして与えられている竹。ゾウが竹をバキバキ折りながら、ときに脚をボリボリとひっかいている様子は、見ていておもしろく、たくさんの来園者の注目を集めていました。
屋内は、自然光や風が通りやすいように工夫されています。こちらは2013年の3月に一般に公開されたばかりの、Elephant Community Centerの様子です。屋内の床面は砂が敷かれており、ゾウの足にも優しい作りになっています。砂は1.2mの深さがあるとか・・・。地熱エネルギーを用いた冷暖房システムにより、冬は暖かく、夏は涼しくなるようになっています。
Elephant barnと呼ばれる、530㎡ほどの屋内施設は非公開で、こちらはツアーに参加すると見学できます。(ツアーの詳細:http://nationalzoo.si.edu/Animals/AsianElephants/ElephantTrails/tour.cfm)
Elephant barnには、体重計が設置され、トレーニングや獣医学的処置が安全におこなえるように壁面や装置の設定にも工夫が施されてされています。
また、オスゾウが場合によっては、1個体で生活できるように隔離できるスペースも作られているようです。
さらに、このElephant trailのユニークな点は、ゾウが飼育施設内だけではなく、森の中の約400mのトレッキングコースを散歩できるようになっている点です。当日は、門が閉まっており、実際に使っているところは見られませんでしたが・・・。
限られたスペースでも、こうしたトレックをつなぎ合わせることで、動物がときには普段の生活とは違う環境を体験することができるのはたのしそうです。
こちらのブログで、ゾウがトレックを歩いている様子が見られます。http://nationalzoo.si.edu/Animals/AsianElephants/Diary/photoblog4.cfm
Elephant trailは2010年にまず屋外のエリアが完成し、徐々に施設を広げ充実をはかってきました。そのために、過去7年間で5800万ドル(日本円で数十億円)が投資されています。それだけあって動物・来園者・飼育に携わる人たち、さらに環境にも、それぞれへ配慮されていることがしっかりと感じられる施設でした。
スミソニアン動物園 Smithsonian’s National Zoo
場所:Washington D.C., USA
入園料:無料
開園日:12月25日以外開園
ホームページ:http://nationalzoo.si.edu/
参考リンク
http://nationalzoo.si.edu/Animals/AsianElephants/ElephantTrails.cfm
Acknowledgement: I thank Dr. Herrelko for her help during my stay at the zoo and also in writing this report!
(やまなし)