- 採食エンリッチメント・認知エンリッチメント
- 種名:チンパンジー(Pan troglodytes)
- 場所:京都市動物園
- 目的:採食時間を延ばす、道具使用行動を促す
京都市動物園では、採食時間をのばすためにチンパンジーが道具を使ってジュースを飲めるようにフィーダーを作っています。
ジューサーは多くのチンパンジーが使用可能で、効率よく採食時間を延ばせるので重宝します。しかしチンパンジーは力も強く思いもよらぬ行動に出ることも多いので、日々の管理の手間をできるだけ減らしつつ強度も保つ…というバランスには頭を悩ませます。
京都市動物園のジューサーは以前にもお知らせしましたが、今回は透明の塩ビパイプのものです。京都市動物園の5個体(設置当時:現在4名)でうまくいった例、うまくいかなかった例を紹介します。
■壊されたもの…
最初は熊本サンクチュアリで用いられている型を元に作りました。底には掃除口をとりつけてあるので、くるくる回せば開き、清掃がしやすくなっています。
作成はノコギリなどで切って、塩ビ用接着剤で蓋などを接着するだけです。きちんと接着できれば強度は十分です。
掃除口は設置の際に歪むと中身がもれやすくなるので、設置する鉄棒とフィーダーの間にはゴムを挟んであります。
格子などで囲まれたケージであれば、外側につけることで、破壊するリスクを下げることができます。しかし、京都市動物園の屋外展示場はチンパンジーの使用する空間に設置しなければなりません。チンパンジーがフィーダーをいじりやすいので、破壊される確率が増加します…。
実際、設置してから3か月後、コイコが掃除口を取ることを覚えてしまいました。
■壊されなかったもの…
そこで、次には南京錠を使って設置することにしました。
①少し手間がかかりますが、鉄パイプを溶接したタイプ
②塩ビパイプを余分に使いますが、針金で設置したタイプ
二重構造になっていて、50径のパイプで作った外側の筒の下から40径のパイプと蓋で作った透明の筒を中に入れて鍵で留めます。
両方南京錠で固定するので、人が取り外すことは簡単です。
さすがのチンパンジーも…
結局①も②も取られていません。
塩ビパイプの費用は径の大きさにもよりますが、4mで数千円です(インターネットなどで購入できます。)。今回のジューサーに使っているのは40径と50径のものです。
透明塩ビパイプは、中身が見えるので、チンパンジーにも人にも中身がわかりやすいです。
見ているお客さんからも、「蜜かな?水かな?ジュースかな?」といったように中身を気にしたり、行動に注目している声が聞こえました。
同時にこんなパネルも設置してあります。
行動を通じて、野生のチンパンジーにつながるようにと思いをこめています。
京都市動物園の生き物・学び研究センターブログでも時々活動を紹介しています。
(山梨 裕美)