Shape Japanの方向性について考える:シンポジウム報告

2013年3月29日に、日本家畜管理学会・日本応用動物行動学会「動物園でアニマルウェルフェアを科学する」というシンポジウムがおこなわれました。このシンポジウムの目的は、動物園というフィールドで、研究活動や、環境エンリッチメントの取り組みをよりよくおこなうためにはどうすればいいのかということを話し合うことです。(詳しくはポスターをご覧ください。)

応用動物行動学会には、動物飼育管理やアニマルウェルフェアに興味をもつ、さまざまな経歴をもった研究者が集まっています。中には、実際に動物園をフィールドとして研究活動をおこなってきた方々も多いです。そのため、こうしたトピックを議論するにあたり、非常によい場の1つです。JSAAB_poster

その中で日本の動物園における環境エンリッチメントのこれまでについて、そしてShape Japanの立ち上げとその方向性の模索について、メンバーの山崎が発表させていただきました。

 

どんな内容だったか簡単にお話しますと・・・

 

・ 環境エンリッチメントとその歴史

環境エンリッチメントは、飼育される動物にとって必要な刺激を特定し、それらの要素を飼育環境に提供することで、動物の生活の充足を目指す飼育技術であり、動物を飼育をするうえで基本となる取り組みのことを指します。1980年代に欧米の動物園で始まった環境エンリッチメントですが、日本においてはその概念や取り組みが1990年代後半に導入されました。もちろん日本でも動物の健康状態に合わせた飼育環境の改善は従来から行なわれていたのですが、環境エンリッチメントに対する正しい理解が広まったわけではありませんでした。例えば、環境エンリッチメントの概念では計画的に改善をおこない動物の状態を客観的に判断することが必須とされていますが、飼育動物に対し家族的な視点に基づいたケアをおこなってきた日本の飼育現場では、欧米的なシステマティックに管理するという考え方が違和感につながる場合もあったようです。また、日本と欧米での文化的な動物観の違いや環境エンリッチメントをおこなう時間や金銭面でのコストの問題などもあり、すんなりと受け入れられないことも多かったのが実際でした…。

 

・環境エンリッチメントの現在

最近では、以前と比べて、さまざまな動物園で環境エンリッチメントがおこなわれるようになってきました。しかし、環境エンリッチメントは、言うは易し、おこなうは難し。環境エンリッチメントの概念や、動物や環境エンリッチメントに関する日本語での情報など、現場が本当に欲しい情報が不足しているのが現状です。

 

・Shape Japanの立ち上げの報告

こうした背景のもと、日々の飼育管理の中で、動物の心身の健康を保つための工夫を重ねていくには、飼育者・獣医師・管理者など現場に携わるさまざまなエキスパートが力を合わせることが大切です。さらに、研究者が飼育現場から生まれた問題意識を理解し、調査・研究のサポートや専門知識の提供を行なうことで、環境エンリッチメントの取り組みがより推進されると考えています。そこで、情報流通や協力をおこなえる媒体となるべく、新しい組織であるShape Japanを立ち上げました。Shape Japanはまずはウェブベースでの情報共有をおこなっていきます。そうした中で、徐々にさまざまな立場の方に活動に参加していただき、みんなで動物や、動物に関わる人のためになるような活動の方向性を考えていきたいとおもっています。(現段階での活動内容の構想については、詳しくはhttp://www.enrichment-jp.org/aim/をご覧ください。)

ディスカッションでは、動物園での研究や環境エンリッチメントの取り組みをさかんにするためには?ということに関して、さまざまな意見がでました。特にShape Japanに関連する部分を少し紹介しますと・・・

・ 家畜福祉の場面では、最初に施設の変容などが始まった。しかしそれが動物の福祉ということを主体としたものでは必ずしもなかった。そこで、現在はまずは動物の福祉を主体にすることを強く意識するようになった。具体的には、家畜の飼育者が異常行動がないかなどを基準に福祉状態を評価するなどの取り組みをおこなっている。環境エンリッチメントは動物の福祉あってのもの。そうした意識の浸透が重要。(家畜研究に携わる研究者)

・ 環境エンリッチメントという言葉がわかりにくい?日本語化は?(家畜研究に携わる研究者)

・ 動物園では、1人の担当者がさまざまな飼育動物を担当している。1種で研究をおこなうことが、ほかの動物の福祉を損ねかねないという矛盾。研究者の対応にも時間がとられるが、そのデメリットを超えるメリットが必要。また、研究に対しての見方が必ずしもポジティブではない中で、飼育担当者が研究活動などをおこなっていく、モチベーションの維持が難しい。そうしたモチベーションを高めてやっていくには横のつながりが重要。そこをShape Japanに期待する。(動物飼育担当者)

・ 家畜福祉の研究者に対して、野生動物の福祉の研究者の絶対数があきらかに少ない。しかし、興味がある人は多いはず。環境エンリッチメントは、動物の種類や施設形態にとらわれず、重要だ。研究者間の協力が必要。(野生動物の研究者)

・私立大学では、動物園の飼育に携わりたい学生が多い。動物園での研究はよいアピールにもなる。(ただ、研究としては難しいことも多いが)応用動物行動学会など、既存の学会の中のつながりを元に、研究者と動物園側のニーズのマッチングなどをおこなっていくことがよいのでは。(家畜動物の研究者)

こうしたご意見から、研究にしても環境エンリッチメントの取り組みにしても、家畜研究者や野生動物研究者、また動物園の飼育の現場それぞれに動物園に関するニーズや期待があり、そうしたさまざまな立場からのニーズをうまく合わせるということの必要性を感じました。

さて、上記の発表報告にもありますとおり、Shape JapanのHPの稼動をはじめました。しかし、より動物のためになるような活動にするためには、動物飼育の現場からの意見や現状を取り入れてていく必要があると考えています。

もしもみなさんが日々お考えのことや、シンポに参加したり、こちらのサイトを見たうえでのご感想などなどありましたら、サイトにあるメッセージ送信フォームをポチっと押して、コメントいただけるとたいへんありがたいです!動物や動物に関わる人にとってよりよい状況を作るために、まずは一緒に考えていきませんか?

(謝辞)今回はこのような企画で、発表する機会をいただけたことに感謝ばかりです。関係のみなさまに心よりお礼申し上げます。

(やまなし)

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