オランウータンのネスティング行動

  • 種名:ボルネオオランウータン(Pongo Pygmaeus)
  • 生息地:ボルネオ島、マレーシア
  • 行動:ネスティング行動

 

野生のオランウータンのベッド

 

野生のオランウータンは、毎日、眠る前に、木の上にベッド(Nest)を作ります(ネスティング)。木の股などの太めの枝の軸にしながら、自分の周りの枝を手で引き寄せ、器用に足下に何重にも枝を折り畳みんで敷き込むことでスプリングとなるような土台をつくります。そして、その上にクッションとなる柔らかい葉を重ねていきます。また、日中に休息をとるためにベッドを作ることもあり、この日中のベッドは、デイベッドと呼ばれます。

ベッドの大きさは、個体のボディサイズに応じて変わります。中には、雨が降ってくると、雨よけの屋根に該当する部分を作る個体や、大量に果実のついた枝をベッドに持ち込んでゆっくり食べる、カウチポテト派の個体もいます。時には、別の個体が使った古いベットに新たな葉を足してリフォームしたり、そのまま手を加えることなく再利用する個体もいます。

古いベッドの上に新しい枝を加えて再利用するオス個体

 

コドモは2才頃より、次第に自分のベッドを作ることができるようになりますが、独立する6-7才頃までは母親と同じベットを使います。遊び盛りの年齢のコドモを追跡していると、ベッドを作っては壊すということを繰り返すという行動を時折観察することができます。うまく自分でベッドを作るようになるためには、こうした遊びを通じた練習と学習の積み重ねが重要だと考えられています。

一度だけ、どういう理由なのか、ベッドを作らずに地上でごろりと寝始めたオス個体もいました。これは、とても珍しいことなので、夜に調査助手達がその場所まで様子を確認しに行くと、慌てた様子で飛び起きて木に登っていったそうです。

日が沈む頃に、地上で眠りはじめるオス個体

 

飼育個体においても、特に夕刻になると、床材やホース、麻袋を使って自分の体のまわりに組み込んでいくネスティング行動が見られることがよくあります。もし素材として生木を導入する場合は、熱帯性の樹木と比較して、日本の樹木は弾力性が低くて折り込みにくいので、よくしなって加工しやすい樹種を選ぶとよいかもしれません。

飼育下における床材を使ったネスティング行動

ベッドに食物用の枝を持ち込んだ個体についての報告論文(英語)

(山崎)

 

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