小型ネコ科に対する採食エンリッチメント

  • 対象種:ジェフロイネコ(L. geoffroyi)・マーゲイ(L. wiedii)・ジャガーネコ(L. tigrinus)
  • 場所:ブラジル・リオデジャネイロ動物園
  • 手法:採食エンリッチメントの実施前・中・後の行動比較
  • 目的:常同行動を抑制する

 

小型ネコ科の仲間、マヌルネコ

 

動物の中には、飼育環境における繁殖率が良いとは言えない種が多くいます。残念ながら、小型のネコ科動物もそのうちに含まれています。その要因として、本来の生活とはかけ離れた単調な環境や不適切な飼育管理によるストレスが大きく影響しているのではないかと考えられています。

今回は、亜熱帯に生息する 3種の小型ネコ科、ジェフロイネコ(L. geoffroyi)、マーゲイ(L. wiedii)、ジャガーネコ(L. tigrinus)に対して、採食エンリッチメントを行ない、常同行動を減らすことができるかどうかを調査した研究をご紹介します。

常同行動とは、目的なく同じ動作を繰り返す行動で、本来の行動が制限されることで生じる葛藤や欲求不満が発現の一因であることがわかっています。そのため、常同行動の変動を調べることで、飼育動物のストレスレベルを推察することができると考えられています。

エンリッチメントの内容は、放飼場のランダムな場所で牛肉を入れた紙袋を乾草の中に隠すというもので、7日間連続して実施しました。その結果、 どの種も 常同行動の一種である「ペーシング(同じ場所の往復移動を繰り返す行動)」を示していましたが、エンリッチメント実施期間中は実施しない期間に比べてペーシングの持続時間が6~8割短くなりました。また、捕獲行動の一部と思われる牛肉を入れた紙袋に忍び寄る行動、社会行動、なわばりを誇示する行動が新たに確認されました。しかし一方で、エンリッチメントに対して関心を示す時間が、日を追うごとに減少することも明らかとなりました。

このように、食物を隠すだけのシンプルな採食エンリッチメントでも、エサに忍び寄り、エサを得た後は食べる場所を確保するなどネコ科に特有な採食行動の一連の流れを引き出すことが可能となり、結果、常同行動を抑制できることがわかりました。

しかし、実施当初は効果的であったエンリッチメントも、毎日続くことで結果的に動物にとって刺激的なものでなくなってしまいます。こうしたことを避けるために、定期的にエンリッチメントの内容を大きく変更することで、生き生きとした行動の発現を維持することができるようです。

Resende, L. S. et al. (2008) The influence of feeding enrichment on the behavior of small felids (Carnivora: Felidae) in captivity. ZOOLOGIA, 26 (4): 601–605.

(小山)

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