アジアゾウは夜も屋外で過ごしたい?

  • 種名:アジアゾウ Elephas maximus
  • 場所:ブロンクス動物園(アメリカ合衆国)
  • 種類:物理エンリッチメント
  • 目的:利用空間を広げる。ゾウが自ら選択する機会を与える。

動物が自ら環境を選択する機会を持つことは、動物福祉を考える上で重要であるとされています。しかし動物園動物、特に大型の哺乳類は夜間になると室内に収容され、過ごす空間を選択する機会が大きく制限されてしまいます。そこで今回は、アジアゾウに夜間も屋外へのアクセスを許した場合の行動の変化を調べた研究を紹介します。

対象はブロンクス動物園で飼育されている3頭のアジアゾウ(すべてメス)です。すべて約34歳で、うち2頭は同居しており、1頭は単独飼育でした。夜間(17:30~8:30)は、4部屋(1部屋あたり48平米)に分けることのできる屋内居室に収容されています。7月から9月にかけて19:00~7:00の行動と滞在場所を赤外線ビデオカメラで撮影しました。この期間中に、猛暑や荒天の日を避けて447平米の屋外運動場に出ることができる日をペア飼育個体もしくは単独飼育個体それぞれに設け、屋内のみに限定した日との比較をおこないました。

屋外・屋内の両方を使える日では、3頭のうち同居している2頭は屋外の滞在時間が有意に長く、単独飼育の1頭は屋内の滞在時間が有意に長いという結果になりました。その1頭も平均すると25%の時間(3時間)を屋外で過ごしていました。全てのゾウが屋外・屋内の両方を使っていたと言えます。また行動に目を向けると、屋外運動場に出ることができる日は立位休息が有意に増加し、横臥位休息と採食、体揺らし(体をゆっくり前後または左右に揺らし続ける行動)が有意に減少しました。記録映像の質の問題で、睡眠時間が減少したのか、それとも立位で睡眠するようになったのかは分かりませんでした。ただ屋外では壁にもたれて立位で睡眠していた可能性もあります。採食時間は減少したものの、採食量は変化が見られなかったため、採食への影響は少なかったものと考えられました。体揺らしは常同行動の一種とされ、その減少は動物福祉への配慮につながったと考えられます。

以上の結果を受けて筆者たちは、ゾウに夜間も屋外へのアクセスを与えることで、好みの場所で過ごす選択肢を増やすことになり、常同行動を減らす効果があったとしています。ゾウ自らが場所を選択できるようにすることで、ゾウの行動に好影響を与えるようです。

(小倉)

Powell, D. M., & Vitale, C. (2016). Behavioral changes in female Asian elephants when given access to an outdoor yard overnight. Zoo Biology, 35(4), 298-303.

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