インコの行動への音楽エンリッチメントの効果

  • 種名:インコ科6種
  • 場所:ウィプスネード動物園(イギリス)
  • 種類:感覚エンリッチメント
  • 目的:音楽の種類による行動への影響の違いを調べる。

インコは動物園動物やペットとしてたくさんの個体が飼育されています。しかし、インコを対象としたエンリッチメント研究は少なく、特に他の動物でよく実施されている音楽を用いたエンリッチメントは報告がありません(インコを対象としたエンリッチメントの例ゴリラでの音楽エンリッチメントの例)。そこで今回は、インコの仲間を対象にさまざまな音楽をエンリッチメントとして用いた際に、行動への影響を調べた研究を紹介します。

対象はオオキボウシインコ1個体(オス)、ヨウム2個体(オス1・メス1)、スミレコンゴウインコ1個体(メス)、アカコンゴウインコ2個体(オス)、ミドリコンゴウインコ2個体(メス)、ルリコンゴウインコ2個体(オス1・メス1)の計10個体です。
観察は以下の6条件でおこないました。

  1. 音楽無し
  2. クラシック
  3. ポップ
  4. 熱帯雨林の環境音
  5. インコの鳴き声
  6. ラジオ

最初に音楽無し条件で観察をした後、その他の条件を実施しました。それぞれ2日間連続しておこない、条件間には24時間の間を開けました。各条件は8:30から14:00にかけて実施し、その間に25分間の観察を7回おこないました。観察中の行動を5分間隔の瞬間サンプリングで記録しました。

記録した行動のうち、条件間で有意な違いが見られたのは、穏やかな発声(コンタクトコールや喉を鳴らす音など)と自己羽繕いでした。穏やかな発声はポップ条件とラジオ条件で、音楽無し条件よりも有意に少なく、ほぼゼロになりました。穏やかな発声はインコの行動レパートリーに通常含まれるものであることから、ポップとラジオはエンリッチメントとしてあまり好ましくないのかもしれません。多くの動物園で同様の音楽をBGMとして流していることから、インコの福祉のためには注意が必要であると言えます。また自己羽繕いは、全ての条件で音楽無し条件よりも増加しました。自己羽繕いは体を健康に保つための維持行動として欠かせない一方、頻度が過ぎると常同行動になり得る行動です。そのため今回の結果は解釈が難しく、さらなる研究が必要であると言えます。
音楽エンリッチメントの効果を評価するには、個体数を増やすなどした研究がさらに必要ですが、少なくともインコの行動に影響を与えることが確認されました。利用方法によっては、適切なエンリッチメントとなる潜在的な可能性を持っていると言えそうです。

本研究では常同行動の減少などポジティブな結果を得ることはできませんでした。しかしエンリッチメントに取り組むうえで、まずはトライしてみること、その結果を踏まえて改善にむけた更なる取り組みへと繋げることはとても重要です。そのための第一歩として、今回紹介したような研究も高い価値を持っていると言えます。

(小倉匡俊)

Williams, I., Hoppitt, W., & Grant, R. (2017). The effect of auditory enrichment, rearing method and social environment on the behavior of zoo-housed psittacines (Aves: Psittaciformes); implications for welfare. Applied Animal Behaviour Science, 186, 85-92.

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