混合飼育によるケープハイラックスとボタンインコの関わり:福山市立動物園小動物舎の事例

・混合飼育、採食エンリッチメント

・種名:ケープハイラックス(Procavia capensis)、ボタンインコ(Agapornis lilianae

・場所:福山市立動物園

・目的:同居個体の習性を用いて、給餌回数を増加させる。盗食をなくす。

 

最近の動物園では、異なる動物種を同じ空間で飼育する混合飼育が取り入れられてきています。混合飼育を行うことがエンリッチメントになり得る場合があるということで、今回はその事例を紹介します。

福山市立動物園の小動物舎は生息地ごとに4ゾーンに分かれていて、その1つのケープハイラックスとボタンインコの展示場には擬木や擬岩、巣箱が設置されています。

ここにはハイラックスが4頭とボタンインコが約70羽飼育され、夜間はハイラックスのみ屋内寝室へ移動します。

給餌回数は同居展示時間に1回、夜間に1回と、ともに2回です。

 

この2種の同居は、開始時より、個体間距離が近いにもかかわらず闘争などの問題もなく、両種ともにこの環境において繁殖していますので、同居は成功していると言えます。

ケープハイラックスは木や擬岩に登ることがとても得意な一方、ボタンインコの巣箱の上で展示時間のほとんどを伏臥したままの状態(非活動的な状態)が多くなってしまったり、地上に給餌したボタンインコ用のエサを盗食したりします。ハイラックスは本来、捕食者を警戒しながら採食やそれに伴う移動を行う習性があり、それに加え、盗食することで、太りやすくなってしまうことから、前述した行動を問題視していました。

 

そこで、これらの点を改善するために、2種ともに好んで食べる小松菜を舎の網の高いところに挟み込みました。

またその他のエサは洗濯バサミと針金を使って、飼料バットを擬岩よりぶら下げて給餌します。

これらのエサはボタンインコしか採食できない位置にあり、ボタンインコが動いたり、食べこぼしたりすることでエサが地面へと落ちていきます。それをケープハイラックスが採食します。つまり、ボタンインコはケープハイラックスにとって、ランダムな自動給餌機のような役割を担っていて、給餌回数を増やすことに繋がっています。ケープハイラックスには通常のエサもあり、エサ(小松菜)獲得に関する闘争はありません。これはともにエサ資源が他にあるからだと考えられます。ボタンインコは約70羽いますので、誰かが小松菜をつつくようになっていますし、ハイラックスは臆病ですので、小松菜が落ちてすぐ食べに来るわけではなく、すきがあれば食べにきます。

 

次に、擬木にカシの木を設置します。擬木には差し込み口があり、木を差しこんだ後、固定用のボルトで枝を固定します。

カシはボタンインコにとっては巣材になり、ケープハイラックスにとってはエサとなります。

太い枝の場合は2種ともに枝の上からアクセスしますが、細い枝の場合、ケープハイラックスはボタンインコより体重が重く、枝の上に行くことが出来ないため、先程と同様に、ボタンインコがカシの葉を落とした時にのみ、ケープハイラックスは採食することができます。

 

このように、混合飼育時には動物の習性や能力を利用して給餌することが、同居個体のエンリッチメントになる場合があるようです。

 

(萩原慎太郎)

 

福山市立動物園のHP:http://www.fukuyamazoo.jp/index.php

 

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