ジュース用フィーダーの使い方

  • 採食エンリッチメント
  • 種名:チンパンジー(Pan troglodytes
  • 場所:京都市動物園
  • 目的:採食時間を延長する、認知能力を発揮できる機会を増やす

 

ジュースを入れたフィーダー

京都市動物園のチンパンジーが利用する屋外グラウンドのサンルームにはジュース用フィーダーが設置されています。天気の良い暖かい日に、特に人気のエンリッチメントです。

作りはとても簡単で、100%果汁のジュース(200cc)をアクリル円筒型容器に入れて、水で10倍ほどに薄め、サンルームの壁面に取り付けた設置器具にはめ込んだら完成です。

このアクリルの内径(約74mm)は手を入れるには少し細いため、中のジュースを飲むにはちょっとした工夫(道具)が必要です。

 

写真2. チンパンジー屋外グラウンド

チンパンジー達は、屋外グラウンドに生える様々な植物やロープの中から道具として使えそうな素材を選び出します。

例えばある日は…..

写真3. コイコが道具になる枝を発見

コレは!と枝を手にして、

写真4. コイコが枝を折りました

ポキッと折ってしまいました。

写真5. 折った枝を沢山ジュースを蓄えられるように加工

枝の先をしがんで、ジュースを沢山蓄えられるように加工してから、いよいよ筒の中に浸します。

この日は、同じ枝を複数のチンパンジーで使い回していました。枝の先はますますハケのようになってゆきます。

写真6. ジェームス

 

また、別の日には……

写真7. 綿のヒモを道具として使う

落ちていたロープの切れ端を使って、ジュースをたっぷりとしみ込ませて飲んでいました。

このフィーダーの場合、自分たちの暮らす環境の中から、ふさわしい道具を見つけたり工夫したりしなければジュースを飲むことができません。京都市動物園のチンパンジー達は自分たちが好きな時に自ら頭を使って考えながらジュースを飲んでいます。

エンリッチメントとして、フィーダー自体はとても単純な作りであり、また透明であるため、見ている私たちにもチンパンジー達が何のために、何をどのように工夫しているのか解りやすいという利点があります。しかし、設置の手間や構造の問題から清掃と実施に手間がかかってしまうところがあります。京都市動物園の担当者達は、もう少し飼育作業の手間が省けるよう、例えば筒の中に、ジュースの入った別の筒を差し込む形にすることで着脱しやすくするなど、今後の改良を試みています。

(三家)

 

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