Cat Tien 国立公園の野生動物とDao Tien Endangered Primate Species Centerのリハビリテーション(ベトナム)②

 

第二回はアジア各地で保護された動物たちの野生復帰の活動をおこなうリハビリテーションセンターの様子です。(前回はこちら

 

野生のテナガザルを見た後に、Dao Tien Endangered Primate Species Centerへ。ここは、Cat Tien National Park内にあり、ドンナイ川をボートで上ったところにあります。イギリスのDorsetにある、Monkey World Ape Rescue Centerにテナガザルが救出されたことがきっかけとなり、生息地のこの場所に2008年に設立されました。現在では野生のテナガザルの調査をおこないながら、動物たちのリハビリや野生復帰の取り組みをおこなっています。

ドンナイ川

ここにはアジアでブッシュミートとしてや伝統薬、ペットとしての飼育などの目的で密猟されて空港や路上などで摘発された、テナガザル、スローロリス、ドゥクラングールなどが集められています。最終的には野生復帰も視野にいれた活動で、徐々にステージを上がっていきながら人工的なケージ環境から野生での生活に近づいていくようになっています。テナガザルであれば、オスとメスのペアで飼育し、そのペアで野生に戻すそうです。野生に戻す際には、一定の期間がたつと自動的に外れるようなGPSカラーをつけて生存を確認できるようにします。理由はわからないけれども、メスの方が生存率が高いと言っていました。

 

テナガザルの第一ステージの飼育施設。人工的なケージだが、ハンモックやロープなどが渡してある。東南アジア定番?のタイヤのリサイクルロープも。

 

テナガザル第二ステージ。木々に囲まれた自然な放飼場。遠くからテナガザルがブラキエーションをするのが見えた。

また、人に馴れた動物が野生での生活を維持し続けるのが難しいことはよく知られています。そのため、あまり人に馴らさないことも大事にしており、第二ステージからは遠くに設置された台の上からテナガザルを眺めます。野生のテナガザルを観察していたときよりも遠い距離でした。さらに、第三ステージには観光客は近づくことができなくなっています。

テナガザルの第三ステージへのドア。一般の観光客は近づくことができない。

 

中には野生復帰できない個体もいます。たとえばピグミースローロリスはペットとして飼うために犬歯を抜かれることもあるため、そうした個体は野生に返せないそうです。また、野生に返しても健康の問題などで再捕獲することもあります。さらに、せっかく何年もかけてリハビリをおこなっても、戻した先でハンターに殺されてしまったりすることもあり問題はたくさんあります。それでも、テナガザルやドゥクラングール、ピグミースローロリスなどの復帰成功例も蓄積されています。

ピグミースローロリスの野生復帰について伝えるポスター。過去4年に13個体のロリスを戻したと書かれている。

ベトナム戦争時代にまかれた枯葉剤の影響でこの地域の植物は大きなダメージを受けたそうです。そのためこのセンターでは、植樹活動も続けています。動物の野生復帰をおこなうとともに、生息地の自然を守る努力も同時におこなう必要があるのでしょう。

植樹のための樹木を育てる。

3泊4日の短い滞在ではありましたが、Cat Tienの野生動物たちとDao Tienのリハビリ中の動物たちを通して、動植物の生態や、ベトナムの歴史の一端まで垣間見ることができました。

また、ペットとして売るための密猟問題などは、わたしたち日本人にも他人事ではありません。こうした事実をきちんと伝えていく必要があるとあらためて感じました。

 

Dao Tien Endangered Primate Species Center

入場料大人14ドルほど。事前の予約が必要だが、大人数での訪問も可能。

(山梨 裕美)

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