アリクイは採食エンリッチメントによって行動や生理学的指標が変化するか?

  • 種名:ミナミコアリクイ(Tamandua tetradactyla
  • 場所:コルドバ動物園(アルゼンチン)
  • 種類:採食エンリッチメント
  • 目的:糞中コルチゾル濃度が副腎皮質活性のモニタリングに有用かどうか確認すること、ならびに採食エンリッチメントを行動と生理指標を用いて評価すること

 

動物福祉研究において近年は行動評価に加えて生理学的指標を関連づけたアプローチが増えてきています。今回は、飼育下のミナミコアリクイに対する採食エンリッチメントを行動・生理の両局面から評価した論文をご紹介します。本種においてはホルモンをもちいた先行研究がほとんどなかったことから、著者らは先ず薬理学試験によって糞中コルチゾル代謝産物(FCMs)の変動を調べて有用性を確かめ、その後、行動観察と糞中コルチゾル濃度の測定結果にもとづき採食エンリッチメントの評価をおこないました。

対象はコルドバ動物園で飼育されているミナミコアリクイ5個体(♂2♀3)で、通常は、低糖粉乳・シリアル・子犬用ドッグフードと水を混ぜた液体状の餌が1日1回与えられていました。

 

先ずは、糞中のコルチゾル濃度がストレス状態と関連していることを調べるために、薬理学試験をおこない、FCMsの変動を調べました。副腎皮質刺激ホルモンであるACTHの筋注投与前10日間、投与後10日間、1週間間隔をあけて、デキサメタゾンの筋注投与前9日間、投与後7日間、それぞれ毎日採取された糞が分析されました。その結果、FCMsは、ACTH投与後に最も高くデキサメタゾン投与後に最も低くなりました。つまり、本種においてFCMsが副腎皮質活性をモニタリングするために有用であることが確認されました。

 

この結果をふまえ、約3カ月後に採食エンリッチメントを実施し、行動とFCMsの指標を用いた評価をおこないました。エンリッチメントの内容は、新奇な36品目の餌の追加、給餌時間の延長、給餌回数の増加、餌の提示方法の改善などです。エンリッチメント前・エンリッチメント・エンリッチメント後の3期間で各6週間としました。

 

行動については、各条件でそれぞれ3日間ずつ、1日につき30分×5セッション観察をおこない、2分ごとの瞬間サンプリングを用いて休息・採食・探索・移動・常同行動・その他に分類した行動を記録しました。その結果、エンリッチメント期間に探索行動が有意に増加し、全体的に活動的な自然の行動が増える傾向がありました。

一方で副腎皮質活性については、各条件でそれぞれ週3回×6週間サンプリングした糞のコルチゾル濃度を分析しました。その結果、行動の結果と同様にエンリッチメント期間に最も低い値となりました。

行動とFCMs濃度の変化の結果から、採食エンリッチメントの実施によってこれらのアリクイの福祉が高まったと捉えられると著者らは述べています。

しかしエンリッチメント後の期間に活動的な行動が減少したりFCMs濃度がエンリッチメント前に比べて高くなりました。このことは、季節の影響あるいはエンリッチメントを取り除いたことによるストレス反応との関連もありえるため、今後さらなる検討が必要です。

 

※FCMs: Fecal cortisol metabolites 糞中コルチゾル代謝産物

※ACTH: 副腎皮質刺激ホルモン

 

Eguizabal V. G. et al., (2013) Assessment of Adrenocortical Acivity and Behavior of the Collared Anteatern(Tamandua tetradactyla) in Response to Food-Based Environmental Enrichment. Zoo Biology, 32(6), 632-640.

 

(橋本 直子)

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