ICEE2015・北京 参加レポート1

2015年5月24日~28日の間、第12回国際環境エンリッチメント会議(ICEE2015)が北京動物園でおこなわれました。その内容を何回かに分けてお届けしてゆきたいと思います!

飼育員、獣医師、研究者、動物園デザイナーなど世界中からエンリッチメントに携わる人たちが集まって情報交換をおこなうICEEは2年に一度開催されます。アジアでは初開催となった今回は北京動物園と北京師範大学がホストとなり、約130名が参加しました。参加費がやや高めだったためか、参加者のうち8割は中国国内から、海外からは2割程でした。ほとんどが中国国内からの参加者ということで、発表は常時通訳がつき英語と中国語で交互におこなわれました。

最初の講演は、今回の招待講演者であるRobert J Young氏(サルフォード大学)で、個体の性格と、新奇性や驚き、恐怖などの動物にとってネガティブにもはたらきうる要素に着目した発表をおこないました。エンリッチメントは動物にとって新しい刺激に接する場面でもあります。しかし、それを動物がどうとらえるかはそれぞれの性格に大きく依存すること、そして、その反応は動物種、年齢、来歴、子育て中かどうかなどによっても変わることが指摘されました。

その上で、新奇性や驚き、さらには捕食者の存在などの恐怖を与える刺激でも短期的で程度が強すぎないものであれば動物の生活や行動にメリハリをつけるなどの良い効果を与える場合もあるかもしれないとのことでした。ただし、それぞれの個体の性格として、新奇性や驚きを必要とする動物もいれば、その逆の場合もあるため、対象となる種や個体の性格・反応性をよく把握し、その特性を尊重した上でエンリッチメントをおこなうべきとのことでした。さらには、最新の実験結果をもとに、基本的には個体の性格・反応性を尊重するべきだが、例えば野生復帰を目指すなど特殊なケースを想定した場合には、その性格自体をを意図的に調整することも可能かもしれない、という議論にもおよびました。

今回の会議では、多くの人たちの発表で「性格(Personality)」「個体差(individual difference)」というキーワードが多用されていました。動物の健康な暮らしを支えるエンリッチメントは、かつて、その初期段階 にとられた、「野生を理想的な状態と見なして飼育下と野生での行動パターンなどの差異を埋めていく」という考え方より、野生状態をヒントとしながらも、あくまでも飼育される動物の個体自身を中心にして考え、その個体が環境をどうとらえるのか、ということも重視する方向にシフトしつつあることが感じられました。この考え方は、当たり前と言えば当たり前のことかもしれませんが、こういったエンリッチメントについてどのように考えていくのか、ということを専門家たちが世界中から集まって科学的なデータに基づいてすりあわせていくのも、ICEEの大切な役割と言えます。<つづく>

(山崎彩夏)

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