ICEE2015・北京 参加レポート2

前回に引き続き、国際環境エンリッチメント会議の報告です。

今回はさらに会議での発表内容をいくつかご紹介してゆきたいと思います。

 

SHAPE of enrichment代表のValerie Hare氏からは、動物園でのエンリッチメントの導入は、動物の心理・行動的な欲求を満たすことに加え、さらに フィジカルフィットネス(適正な身体能力)の向上も意識的に考慮しようという提案がされました。例えば、フィーダーの導入によって単に採食時間を伸ばすだけでではなく、その動物本来の運動パターンをひきだすような設置方法やシチュエーションを考えることで動物の筋力・持久性・柔軟性などの基本的な運動能力を積極的に発揮させる、というものです。立てた丸太の上に肉を置いてトラに登らせたり、ヒョウが揺れる台の上で筋力や尾でバランスをとりながらフィーダーから採食する動画が紹介されました。動画では、肉食動物たちに特有なダイナミックな動きに目を奪われますが、あくまでも彼らの身体能力を引き出す場面を増大させ、フィジカルフィットネスを向上させるためにおこなわれるエンリッチメントです。

さらに、ICEE大会長のDavid Shepherdson博士(オレゴン動物園)からは、エンリッチメントが繁殖に与える影響について、そのポイントが分かりやすく紹介されました。世界中の動物園や保護施設が希少種の繁殖に取り組んでいる中、飼育下では野生と比べて繁殖成功率が低下する種も依然多く、大きな課題となっています。 Shepherdson博士は、ホッキョクグマやパンダの事例を紹介しながら、エンリッチメント導入により、動物のストレスを軽減することで排卵などの生理的サイクルが促されることや、若齢個体の繁殖行動の学習が促進することが繁殖成功率の向上につながることを話しました。また、最新のデータをもとに繁殖する相手を選択(Mate Choice)できるような社会エンリッチメントも効果的であると説明しました。「パンダが繁殖相手を選べるようにすることでパンダの繁殖成功率は5倍になる」と述べられた時には、会場からどよめきがわきました。(詳細は近く論文発表されるとのことです。)

また、ランドスケープイマージョン提唱者としても知られる動物園デザイナーのJon Coe氏からは、最近の動物園デザインのホットトピックとして「トレイルネットワーク」が紹介されました。「トレイルネットワーク」は、様々な動物の放飼場をトレイルで結ぶことで、園全体を動物の利用空間としてローテーションさせて活用する飼育展示方法です。この「トレイルネットワーク」は、動物園生物学の先駆者であるH・ヘディガー氏の「テリトリー」のコンセプトが下敷きになっています。野生下で動物たちがホームエリアを起点として様々な空間利用をおこなうのと同じような空間のネットワークを動物園内で再現し、飼育動物たちの利用空間を拡大・多様化させ、動物自身に自発的に使う空間を選ばせることで、その生活パターンにも変化を加えていきます。小型のサルに加え、トラやゴリラがトレイルを移動していく様子はまさに壮観でした。

ちなみに、今回のICEEは、日本からは動物園職員や研究者ら9名が参加し、口頭発表が1題、ポスター発表5題がおこなわれました!日本国内の取り組みについて参加者達からも多くの関心が寄せられていました。なお、次回のICEE2017の開催地は現在未定です!決まり次第、SHAPE-Japanでお伝えしていきたいと思います。

そして…ICEEレポートは、これで終わりではありません。続いて、エンリッチメント界のキーパーソン達にインタビューもおこないましたので、次回以降の報告もお楽しみに!

The Shape of Enrichment代表のValerie Hare氏と。

(山崎彩夏)

 

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