ICEE2019Kyotoレポート① – 一般公開シンポジウム

世界中の動物園水族館職員や研究者が集まり、環境エンリッチメントの普及と技術や情報の共有のために2年に1度開催される国際環境エンリッチメント会議の第14回目が、2019年6月22~26日に京都で開催されました。

SHAPE-Japanも共催団体として運営に関わり、シンポジウムや口頭発表、ワークショップなどに参加してきましたので、その様子をみなさんにもシェアしたいと思います。

まず初回のレポートは、私も話題提供者として登壇させていただいた、京都市動物園で開催された一般公開シンポジウム「動物園動物の福祉 わたしたちはかかわる動物に何ができるのか?」の様子をご紹介します。

シンポジウムは基調講演として「動物園にできること」や「動物園から未来を変える-ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン」などの著書で知られる作家の川端裕人さんがお話をされた後、SHAPE-Japanのメンバーでもある京都市動物園生き物学び研究センターの山梨さん、福山市立動物園の萩原さん、大牟田市動物園の伴さん、そして私(盛岡市動物公園の荒井)の4名が話題提供として国内での事例を紹介し、最後にパネルディスカッションを行いました。

基調講演では環境エンリッチメントの起源から海外での広まり、そして日本に言葉や概念が持ち込まれて20年間の歩みを、川端さんが審査員を務めている市民ZOOネットワークのエンリッチメント大賞受賞者を例に紹介されました。草の根的な個人の努力からチームでの取り組みへ、そして新たに造られる施設がエンリッチメントを前提に設計されるようになり、園を挙げての取り組みへと成長を遂げると共に、科学的根拠に基づいた取り組みや、市民を巻き込み伝えていくという段階へと進んでいく過程が解りやすく紹介されていました。

事例紹介では、初めに私から盛岡市動物公園北里大学と行っている環境エンリッチメントをテーマにした実習と研究の取り組み、動物園ファンや来園者と一緒に取り組んでいる活動について紹介した後、大牟田市動物園の伴さんからここ数年力を入れて取り組まれている屠体給餌の取り組みと、給餌方法の変更による行動の変化などについて紹介がありました。採食行動の多様化はもちろんのこと、行動の時間配分や獣害などの野生動物と人が抱える問題にもアプローチをするという非常に野心的な内容でした。(屠体給餌については「Wild meǽt Zoo」のサイトをご覧ください。)

3番目に話した福山市立動物園の萩原さんは、国内で初めて生存個体の結核発症を発見し、献身的な治療と福祉向上の取り組みを行っているボルネオゾウのふくちゃんの話だけでなく、今回は小動物舎で行っている環境エンリッチメントについて紹介をされました。ご本人は「消防ホースをねじるだけ」「枝をぶら下げるだけ」など簡単なものばかりと謙遜していましたが、特定の飼育係しかできないエンリッチメントや、担当者が変わってしまったら継続されないものでは逆に動物の福祉を低下させることにもつながりかねませんので、環境エンリッチメントに取り組むうえで非常に重要なことを話してくださったと思います。

4番目の京都市動物園生き物学び研究センターの山梨さんは、京都市動物園での取り組みを国際環境エンリッチメント会議で発表される内容を中心にお話しされました。特に、対象種を決めて担当動物の垣根を越えてエンリッチメントの案を募り、実践と評価を行った取り組みは、他園ではみられない画期的なものでした。今年も継続して実施する予定とのことで今後の動向も楽しみです。また、昨今多くの動物園で実施方法が再検討されているふれあい方法の変更によるストレス数値の変化に関する内容もとても興味深く、ふれあい動物の福祉向上のために実施方法の変更を検討している園館にとっては非常に考えさせられるものだったのではないかと思います。

最後のパネルディスカッションでは会場からもたくさんの質問が出て、シンポジウム全体を通して日本での環境エンリッチメントのこれまでとこれからが詰まった内容になったのではないかと思います。参加者のみなさんの心にも何かを残せていたら嬉しいです。

次回はICEE2日目の午前中に開催されたゾウのシンポジウムの様子をご紹介します。お楽しみに。

荒井雄大(盛岡市動物公園/SHAPE-Japan)

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