ICEE2019Kyotoレポート⑤ – ハズバンダリートレーニング・ワークショップ

第14回国際環境エンリッチメント会議のレポート第5回目です。

今回はSHAPE-Japanが企画したワークショップのひとつ、ハズバンダリートレーニング・ワークショップの様子をご報告したいと思います。

これまでのレポートは、下記リンクからご覧ください。

1回目(一般公開シンポジウム)のレポートはこちら、2回目(ゾウシンポジウム)のレポートはこちら、3回目(口頭発表)のレポートはこちら、4回目(Rapid communication・SHAPE-Japan活動報告)のレポートはこちらからどうぞ。

会議4日目の午後、百周年時計台記念館内のホールにおいて、「Training Workshop: What is the scientific training?-the basic ABA and its application-」を開催しました。オーガナイザーは、大牟田市動物園の飼育員で星槎大学大学院の大学院生、そしてSHAPEメンバーでもある伴和幸さんと、同動物園で企画広報を担当されている冨澤奏子さんが務められました。

参加者の割合はやはり日本人が多く、海外の方は3割程度ではあったものの、総勢54名の方に参加していただきました。またそれ以外に、講演だけでも見学したいという方々にもたくさん集まっていただきました。

参加者は5~6名ごとに9つのグループに分けられました。国籍も所属も担当動物もさまざまな混成チームです。ワークショップ開始前は、ちょっぴり緊張した面持ちで席についておられる方もいらっしゃいましたが・・・開始早々テンポよく会場を盛り上げてくれた冨澤さんに、日本人の参加者はとても勇気づけられたのでしょう。オリエンテーションでは、日本人同士であっても英語でコミュニケーションを取ることがルールという「日本語禁止令」が敷かれましたが、グループ内の自己紹介の時間ではすでに参加者の笑顔がたくさん見られました。

アイスブレイクが無事済んだところで、いよいよワークショップ本番です。

前半の座学では、まず初めに星槎大学の杉山尚子教授が基調講演で「動物のトレーニングにおける行動分析学」について話されました。動物のトレーニングを効果的に行うために、行動を科学的に理解することの重要性について、スキナーやパブロフなど心理学分野で著名な科学者たちの研究事例を挙げながら解説していただきました。

その後、シェイピングゲームと称して参加者の皆さんにクリッカーを使った体感ゲームをしていただきました。グループの中で1人トレーニングを受ける役を立て、他のメンバーはトレーナーとなります。トレーニングを受ける人がランダムに動き、その中で特定の動きに近い動作が見られたらすかさずクリック!という単純なルールですが、トレーナー役が複数人いるとクリックのタイミングが違ったり、クリックを鳴らすかどうかの判断がバラバラだったりとなかなか難しかったようです。

続いて、国内外の動物園におけるハズバンダリートレーニングの取り組みが紹介されました。

Jody Carriganさんは、アメリカのアトランタ動物園で行なわれているゴリラのトレーニングプログラムについて話してくださいました。飼育下のゴリラの死亡原因に心臓病が多いことから、心拍数や血圧の測定、心臓の超音波診断、採血など多岐にわたる健康管理が欠かせないそうです。そのため、体に負担のある鎮静剤を使うのではなく、トレーニングを通してゴリラの自発的な行動を促し、健康診断に協力してもらえる関係を築いているとのことでした。

座学の最後は、伴さんが大牟田市動物園におけるハズバンダリートレーニングの事例について話されました。この動物園では、「動物福祉を伝える動物園」をテーマとしており、だれでも動物に負担なく健康管理ができることを目指したトレーニングを取り入れています。国内で初めて成功したライオンやマンドリルの採血のほか、キツネのパズルフィーダー馴致など、トレーニングを成功させるまでにどのような段階を踏むのか、その手順についてわかりやすく解説してくださいました。

ここまでで、すでに2時間経過。じっくりと学んだ後は、実践編に移ります。

初めに、「キリンの削蹄」、「ラマの点眼」、「レッサーパンダの歯磨き」について、すでに完成されたトレーニングの動画が流れました。この動画を見て、どのような手順でトレーニングを行なったのかをグループ内で考えてもらい、まとめます。グループワークが始まったとたん、種特有の行動の中からどの動作をピックアップするのか、手順の順序やどこまで細かく手順を設定するかなど、会場内は議論にあふれ室温がぐっと上がったように感じました。自分の考えを英語で伝えることが難しい時は、身振り手振りや絵を描くなどしてアイデアを共有し、和気あいあいと話し合いが行われていました。

グループワークの締めくくりとして、各グループで考えた手順について、動物役とトレーナー役でデモンストレーションをしながら発表していただきました。どのグループも、ターゲットとなる行動の誘発までの手順の数や内容がさまざまで、オリジナリティにあふれるものでした(動物役の方の渾身の演技も見どころでした!)。発表後は、会場の一番前で聴いていたJodyさんと伴さんから、各グループに対して感想や具体的なアドバイスをいただきました。

今回のワークショップでは、ハズバンダリートレーニングに関する情報のインプット、知識や考えのアウトプット、実践から振り返りまで含めて、包括的に進められたように思います。そして、国際会議ならではのグローバルな情報交換を通して、参加者の皆さんにとって熱く内容の濃い経験となっていましたら幸いです!

小山奈穂(民間企業/SHAPE-Japan)

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