トラを夜間単独で収容することはストレスになるのか

・対象種:トラ(Panthera tigris hybrids)

・場所:ディズニー・アニマル・キングダム、フロリダ州、アメリカ

・手法:夜間収容時の社会環境の変化

・目的:複数で飼育されているトラを単独で収容した場合の行動への影響を調べる

 

 

野生のトラは基本的に単独で生活していると考えられています。しかし、近年の調査では、広い場所で狩りをする場合に一時的に群を形成する様子などが観察されており、トラは必ずしも常に単独生活者であるとは言えないようです。

動物園では、トラは夜間1頭ずつあるいは数頭のグループで寝室に収容されるのが一般的です。このように野生では単独で生活するトラも、飼育下では群飼育も可能であることがわかっています。しかし、そのような個体間の関わりの有無が実際にトラにどのような影響をおよぼしているのかについてはあまり研究されていません。

刺激の少ない飼育環境下では、仲間とのコミュニケーションが社会エンリッチメントとして機能する一方、社会的ストレスを与える場合もあり、トラの夜間の収容方法として1頭か複数頭かどちらが適しているのかはまだはっきりしていないのが現状です。

今回ご紹介するディズニー・アニマル・キングダムでは、人工哺育で一緒に育った6頭のメスのトラを飼育していました。しかし、どのトラも高齢化に伴い、餌を食べ終わる時間が異なるなど、個体によって健康管理やトレーニング、エンリッチメントを個別におこなう必要が出てきました。 そこで、これまで夜間に複数頭で収容していたトラを、1頭ずつの収容に切り替えることで、その行動にどのような変化が現れるのかについての調査が行なわれました。

トラは、週のうち5日間は複数頭(2〜3頭または4頭)で、残りの2日間は1頭で収容されていました。それぞれの条件を週に2日間ずつ、2年に渡り(連続3ヵ月×2回/年)おこない、夜間のビデオ観察をおこなったところ、睡眠時間や睡眠の姿勢にはほとんど影響を与えていないことがわかりました。さらに、ペーシング、扉を叩く、吠えといったトラのストレスの指標となる行動はほとんど現れず、収容方法による変化は見られませんでした。また、1頭収容の際には自己グルーミングがより多く発現しましたが、複数頭収容では相互グルーミングが多く見られ、 他個体の近くにいたり喉鳴らしや社会的発声が頻繁に発現していました。

以上のことから、複数頭で飼育しているトラは週に2、3日であれば1頭で収容しても、睡眠が阻害されたり強いストレスを感じることもなく、福祉的にそれほど問題にはならないことがわかりました。ただし、今回の研究では、別々の寝室とはいえ、トラ同士はケージ越しにお互いの姿や匂い、音を認識することができていたことが影響した可能性もあります。トラに限らず、飼育管理のうえでこれまでの社会環境に何らかの変更をおこなう必要が生じた場合、動物にどのような影響を与えているのか、具体的に把握することは重要と言えるでしょう。

Miller A., et al. (2013) Behavioral analysis of Tiger night housing practices. Zoo Biology, 32: 189–194.

(小山)

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