The Shape of Enrichment News Letter 2012年第21巻4号

本部のニュースレター「The Shape of Enrichment」2012年第21巻4号の内容を簡単にご紹介します。

ネズミキツネザルのタワー式エンリッチメントケージ P.1
イギリスのワイト島動物園では、ネズミキツネザルの飼育ケージを層に分け、それぞれの層において様々なエンリッチメントを同時に実施しています。
例えば、一番下の層であるケージ床面には枝を敷き詰め、利用可能な空間を増やして活動性を高めています。また、天井付近の最上層では、メッシュ状の天井の上に凍らせたジュースを置き、溶ける氷を少しずつキツネザルが舐めることができるようにしています。このように、同時にたくさんのエンリッチメントをおこなうことで、動物の反応を維持しながら行動の多様性を高めることができます。

ラッコの冷たい「楽しみ」 P.2
アメリカ合衆国のジョージア水族館では、カリフォルニアラッコに凍らせた食べ物をエンリッチメントとして与えています。例えば、凍らせた食べ物を陸上に置くことで探索行動を促すことができます。また、ボランティアスタッフなどに協力してもらい、ハロウィンの季節にはカボチャに色や形を似せるなどして餌を凍らせながら、季節に合わせた展示で来園者の興味を引くと同時に、ラッコの多様な行動を引き出します。

餌が少しずつ出てくる回転式パズルフィーダー P.3-4
アメリカ合衆国のディズニーアニマルキングダムでは、動物が操作することで餌が少しずつ出てくるよう、新たな回転式のフィーダーを開発しました。
実際にブタ、ヤギ、ヒツジなどにこのフィーダーを与えたところ、その反応はそれぞれ異なっていたようです。例えば、ブタが最も早くフィーダーの仕組みを理解し、最もよく使っていました。一方でヤギは、ハンドルを回して餌を落とすことはできたものの、実際に餌を手に入れたのはフィーダーの近くで待ち構えていた別の個体でした。
本記事ではこの新しく効果的なフィーダーについて、図と写真を交えながら、その構造や組み立て方法について詳細に紹介しています。

エンリッチメント・ワークショップ:ブラジルの肉食動物に焦点をあてて P.5-6
The Shape of EnrichmentSHAPE-Brazilはいくつかの団体と協力して、環境エンリッチメントについてのワークショップを開催しました。The Shape of Enrichmentとイギリスのポートリム動物園から専門の講師を招き、ブラジルの13の動物飼育施設の職員たちが参加しました。
このワークショップでは動物園で実際にエンリッチメントの計画を立てて実施し、その効果を評価しました。参加者はグループごとに分かれ、アカハナグマやオセロット、ジャガランディの放飼場をリニューアルする作業をおこないました。まず、対象となる動物種の要求や個体の特徴を調べ、それらの情報を元にエンリッチメントのアイデアを出し合いました。実際にフィーダーやシーソーなど様々なエンリッチメントが考案され、飼育担当者の許可の上で、導入がされました。
最後には動物が新しいエンリッチメントをどのように使っているか観察し、評価をおこないました。今回のワークショップにより、ブラジルに生息する肉食動物の飼育環境を改善することができたとともに、参加者にとっても良い刺激となったようです。

動物園における環境エンリッチメントの実施状況について P.7-8
動物園で動物を飼育することは、野生動物の保全のためにも重要です。動物園では動物の保全に役立つ様々な取り組みがおこなわれながらも、同時に多くの動物園において、未だに動物が本来の行動をおこなうことができていないのもまた現状です。
そこで、44ヵ国の215の動物園にアンケートを送付し、環境エンリッチメントの実施状況について調査をおこないました。
その結果、動物園全体として環境エンリッチメントが実施されているわけではないが、いくつかの環境エンリッチメントが飼育員の日常業務の一部としておこなわれているというパターンが最も多く、まったくエンリッチメントを実施していない施設は10%のみでした。とはいえ、調査からは環境エンリッチメントはまだ十分に実施されているとは言えず、まだ改善の余地があることがわかりました。また、環境エンリッチメントの実施にあたり、動物の行動や生態についての情報が足りないことが問題となる場合が多いことがわかりました。今後は環境エンリッチメントについての情報交換を積極的におこなう必要がありそうです。

マレーグマの超音波検査のためのオペラント条件付け P.9-10
シンガポール動物園では、2008年に新しいオスのマレーグマが導入され、ペア作りが順調に進んでいます。そこで、妊娠の兆候を調べるための超音波検査を毎週1回実施することになりました。 これに先立ち、 動物にストレスを与えることなく検査をおこなうためのオペラント条件付けによるトレーニングが開始されました。
トレーニングは週に2~3回、1回あたり15分ほど、ターゲットに触れる、座る、口を開ける、脚や胸を差し出すなどの内容で始めました。対象のメスは90%以上の割合で自発的にトレーニングに参加していました。そこで、腹部を見せる、そこを棒で触るなど段階的にトレーニングを重ね、1ヵ月ほどで超音波検査をおこなうことができるようになりました。このトレーニングは、音波検査をスムーズにおこなえるようになっただけではなく、常同行動が減るなどの効果も副次的にあったそうです。

第11回国際エンリッチメント会議は南アフリカでの開催! P.11-13
2013年10月15~18日に南アフリカで開催される国際エンリッチメント会議2013について、プログラムや開催会場、宿泊地、参加費などを紹介します。
SHAPE-Japanによる紹介記事はこちら

お知らせ P.13-14
ニュースレターの購読について / 投稿記事の募集について
→ニュースレター「The Shape of Enrichment」の購読申込みはこちら(英語)
→購読申込みはのガイドはこちら(日本語)。(小倉)
先頭に戻る