ロリスの餌と健康の関係~ゴム(Gum)で歯の健康を守る?~

  • 種名:ピグミースローロリス(Nycticebus pygmaeus)
  • 場所:アメリカ・ヨーロッパ・ベトナム・タイの飼育施設
  • 種類:アンケート調査
  • 目的:飼育下ピグミースローロリスの給餌品目と健康の関係を調べる。

 

採食エンリッチメントなどを考えるにあたって、どんな食べ物を与えるのかはとっても重要です。今回はピグミースローロリスの給餌品目について調べた論文を紹介します。

 

 

ピグミースローロリスはロリスのなかでももっとも多く飼育されている種のひとつです。過去の研究から、多くの個体が腎臓や循環器、消化器系等に問題を抱えていることがわかっています。理由ははっきりしていませんが、複数の研究者は給餌内容に関連しているのではないかと考えています。スローロリスは野生では昆虫や蜜、樹液やゴムなどを食べており、果実の割合は低いと言われています。一方で飼育下では、樹液やゴムはほとんど食べずに果物を食べる割合が高くなります。今回ご紹介する論文では、アメリカ・ヨーロッパ・ベトナム・タイでピグミースローロリスを飼育している39施設(160個体)から得られたアンケート調査結果をもとに、給餌品目と健康についての関連を調べました。

 

結果を簡単にまとめると、虫歯など歯の問題がもっとも多い健康問題として報告されており、ゴムを与えているかどうかが歯の問題を予測する要因となっていることがわかりました。ゴムを与えていることが、歯の問題の発生を減少するという可能性が示唆されました。一方、各施設で果物を与えている量を3段階にレベル分けして、関連を調べたところ、果物を与えている量が多い場合に歯の問題の発生率が高いという結果が得られました。

野生の スローロリス類は木をほり穴をあけ、樹液やゴムを採食します。そのため、そうした生態に適応した、歯の形態や消化器官をもっています。野生本来の行動を発揮させ、健康を保つためにはゴムを与えることが重要なのではないかと著者たちは述べています。

果実食と言われる動物でも、実際に野生で食べる果物の多くは飼育下で与えられる人間用のものよりも、繊維分が多く、糖分が少なかったりします。おいしい果物はさまざまな動物にとって、楽しみにもつながる部分もありますし、投薬などのときにも役立つ側面があります。さまざまな事例が蓄積されてきた現在、いまいちど健康を損ねないようなバランスを検討するべき時期に来ているのでしょう。今回の論文は、アンケート調査にもとづいたものなので、実際にゴムがどうして歯の健康に寄与しているのかということや、給餌品目に関連したその他の環境要因の存在などははっきりしません。このあたりは今後それぞれの飼育施設での実例をためていく必要がありそうです。

 

*追記:今回の記事で使用している「ゴム」はGum(ゴム科植物から得られる軟質の高分子)の訳として使っています。英語をそのまま読むとGumはガムですが、誤解を招くこともあるかと思い「ゴム」としています。飼育下では、アラビアガムなどを与えることが多いです。(2015/10/28)

 

(山梨 裕美)

 

Cabana, F. and Nekaris, K.A.I., 2015. Diets high in fruits and low in gum exudates promote the occurrence and development of dental disease in pygmy slow loris (Nycticebus pygmaeus). Zoo Biol.

 

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