コドモは遊び、オトナは食べる!ニホンザルの生米フィーダー

・採食エンリッチメント

・対象:ニホンザル (Macaca fuscata fuscata)

・場所:仙台市八木山動物園

・目的:フィーダーを用いてニホンザルの採食行動や遊びの行動を引き出す

 

動物園でニホンザルの展示と言えば、展示場の中にサル山がどんとそびえているイメージがありますが、中には遊園地ともアスレチックとも言える楽しげな施設もあります。八木山動物園にあるニホンザルの展示場では、観覧車や滑り台、鎖ハシゴのような人工物と竹やロープを用いて、サルが活動的になるように空間の複雑性を高めています。

 

さらにこのような物理環境の工夫に加え、生米を使ってエサへの群がりをできるだけ分散させる給餌をおこなっています。その際には、生米をばらまくだけでなく、専用のフィーダーも設置されます。今回は、生米用フィーダーとそれに対するサルの反応についてご紹介いたします。

生米用フィーダーには、ホームセンターで売っている暗渠(あんきょ)排水パイプという穴の空いたパイプを約30cmに切断したものが使われています。以前は竹筒に穴を空けたものを使用していましたが、米粒を中に入れにくかったため、素材を見直した結果このパイプに行き着いたようです。

 

筒の片側から米を入れ、キャップでふたができるように作られています。

 

フィーダーを振ると、無数の細かい穴から少しずつ米が出てくる仕組みになっています。そして、フィーダーに鎖とカラビナをつなぎ、展示場内のロープの高めの位置に取り付けます。

 

すると、次々に体の軽い若い個体が集まってきて、いじる、振り回す、かじる、乗るなど、フィーダーに対する活発な操作、遊びの行動が見られました。一方、小さなコドモのいる親やオトナたちは、その下に集まってバラバラと落ちてくる米を食べることに集中していました。

 

フィーダーが設置されている間は、エサや遊具を求めての追いかけ合いや取っ組み合いなどの社会的な遊びの行動が見られました。また映像のように、観覧車に乗ったり、ロープにつかまって自分でクルクルと回ったりと、他の遊具を使って単独で遊ぶ様子も見られ、群れ全体が活動的になったようでした。

 

飼育担当の高橋さんによると、1年前に始めた頃は放飼場内の観覧車に設置していたそうですが、地面にいるオトナが回転を止めてフィーダーを独占してしまったため、現在のように高所で足場の不安定な場所に設置するに至ったとのことでした。このようにフィーダー1つでも、遊びたいコドモと食べたいオトナ、それぞれの世代の要求に応えることができるよう、フィーダーの素材や設置方法についての試行錯誤がおこなわれています。

(こやま)

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