簡単!安価な!エンリッチメント:宮崎市フェニックス自然動物園チンパンジー舎の取り組み②

  • 採食エンリッチメント、認知エンリッチメント
  • 種名:チンパンジー(Pan troglodytes
  • 場所:宮崎市フェニックス自然動物園
  • 目的:採食時間を延長する、チンパンジーの認知能力が発揮できる機会を増やす

第二回:ケージの外から食べ物の補充が可能!:串刺しフィーダー&餌すくいフィーダー

宮崎市フェニックス自然動物園の第二回です。

前回はプールボックスを用いた簡単に設置できる採食エンリッチメントを紹介しました。ただ、食べ物を補充をするためには飼育員がケージの中に入らないといけないため、一日に何度も…とはいきません。そこで今回は、ケージの外からでも食べ物を補充可能な、餌串刺しフィーダーと餌すくい器をご紹介します!

 

①串刺しフィーダー

鉄製の箱型で、上面は大人のチンパンジーの手が入らない程度の網目の格子のふたがついています。

フィーダーには、鎖でつながった鉄串も一緒に設置されています。チンパンジーがそれを用いて中の野菜などを突き刺して食べることができます。安全性を考えて、串が放飼場内に入らないようチェーンの長さを調整しています。

 

中には果物や野菜を入れます。2㎝各に切ったイモ(500g)・ニンジン(500g)・リンゴ(300g)・オレンジ(300g)を入れると、1-2時間ほどもちます。

優位な個体のみが独占しないように、嗜好性の高い果物でなく、イモやニンジンなどを主にすることで、低順位の個体でも使用できるようにしています。

2㎝角程度が、串の大きさに対してバランスがよく、ちょうど突きさすことができるぎりぎりのサイズにしてあります。

 

このフィーダーは園内の補修工事などで用いた廃材の鉄を用いているので、なんと材料費は、設置に用いるアンカーボルトの費用、400円程度です。これなら、コーヒーを1杯我慢するだけで何とかなりそうです…

 

②餌すくいフィーダー

串刺しフィーダーの進化型です。①で設置した鉄串に加え、小さなショベルが溶接されています。

鉄串では突き刺せない、ペレットをすくって食べることができます。

 

①より複雑な操作が必要なため、できる個体は限られてしまいますが、食べ物・行動ともにバリエーションを増やすことができます。

難易度が高くなるとできない個体も出てきてしまいますが、エンリッチメントについての研究では、適度に動物が挑戦し、試行錯誤できる状況をつくることの大切さが近年重要視されています(たとえばMeehan and Mench, 2007、Morimura, 2006など)。たとえ難しくても、それを何とか解決したあとに食べる食べ物は、動物にとっても格別なものかもしれません…?!

 

ユズ(3歳)だけの秘策。

 

(郡 健一郎・山梨 裕美)

郡 健一郎:宮崎市フェニックス自然動物園でチンパンジーなどの飼育に携わる。フェニックス動物園の動物園だより「動物リアクションシリーズ」でも、エンリッチメントの内容を紹介している。http://www.miyazaki-city-zoo.jp/list/index.html

宮崎市フェニックス自然動物園HP:http://www.miyazaki-city-zoo.jp/

 

参考文献

C.L. Meehan, J.A. Mench, The challenge of challenge: Can problem solving opportunities enhance animal welfare? Applied Animal Behaviour Science. 102 (2007) 246-261.

N. Morimura, Cognitive enrichment in chimpanzees: An approach of welfare entailing an animal’s entire resources. In: T. Matsuzawa, Tomonaga, M., Tanaka, M., (Ed.), Cognitive development in chimpanzees., Springer, Tokyo, 2006, pp. 368-391.

 

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