動物の「好み」はエンリッチメントの効果を予測できるか?

 

動物が好む環境エンリッチメントは、動物の福祉を改善する効果も大きいと考えられています。一方で、動物が持つ好みと環境エンリッチメントの効果を実験的に調べた研究は存在しませんでした。今回ご紹介する研究は、動物が持つ好みと、環境エンリッチメントの効果の関係を調べた論文です。

対象はサンタフェ大学教育動物園で飼育されている3頭のガラパゴスゾウガメです。好みと効果を調べたエンリッチメントは以下の4種類です。

  • ブーマーボール
  • スプリンクラー
  • 飼育担当者が甲羅をごしごし磨く
  • 飼育担当者が首をこする

以上のエンリッチメントを用いて、次の2つのテストをおこないました。

  • 好みのテスト:エンリッチメント2種類をさまざまな組み合わせで左右に並べて同時に見せ、カメがどちらに近づくかを調べた。それぞれの組み合わせで左右の場所を入れ替えて一回ずつ呈示した。
  • 効果のテスト:エンリッチメントを1種類ずつ与えて、カメの歩行や個体間交渉、種特異的な行動(首伸ばし)の頻度、展示場内の場所ごとの滞在時間の違いを調べた。

好みのテストの結果を個体ごとに分析すると、3個体中2個体でブーマーボールやスプリンクラーよりも飼育担当者との社会交渉を有意に多く選択しました。また、効果のテストの結果と照らし合わせると、同じ2個体で最もよく選択したエンリッチメントと歩行の頻度が高かったエンリッチメント、展示場内の滞在場所が広がったエンリッチメントが一致しました。一方で、種特異的な行動や個体間交渉の頻度が高いエンリッチメントとよく選択したエンリッチメントは一致せず、残りの1個体ではすべての行動でよく選択したエンリッチメントとの一致は見られませんでした。

本研究から、筆者たちは環境エンリッチメントの好みからその効果をある程度予測できると結論づけています。一方、個体差や指標とする行動による違いもあり、比較的選ばれないエンリッチメントは効果が少ないとは必ずしも言えないとも述べています。また、は虫類を対象とした環境エンリッチメントについての知見は少なく、飼育担当者との交渉が持つ高い効果を示したことも、本研究の成果と言えるでしょう。

Mehrkam, L. R. and Dorey, N. R. (2014), Is preference a predictor of enrichment efficacy in Galapagos tortoises (Chelonoidis nigra)?. Zoo Biol., 33: 275–284.

(小倉匡俊)

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