カラカルの簡易的な物理エンリッチメント:福山市立動物園猛獣舎の事例

  • 物理エンリッチメント
  • 種名:カラカル(Caracal caracal
  • 場所:福山市立動物園
  • 目的:展示を考慮しながら、繁殖後の隠れ場所や休息場所の増加

動物園の展示場は、来園者から動物が見やすいように作られることが多く、そのことから動物たちの隠れ場所や休息場所など、本来持つ習性を発揮することができない空間となりうることがしばしばあります。特に繁殖後は、親やこどもにとって、来園者の視線がストレスとなる可能性があるため、そのような変化を考慮した展示空間を作っていく必要があると考えられます。

しかし通常、展示場の設備を改良していくには、高額な修繕費用がかかるため、繁殖のような特定の期間だけ臨時的に改良することは難しいです。

これを打開する方策として、福山市立動物園のカラカル展示場では、繁殖後2か月半より飼料用の野菜に使用される段ボール箱が設置されています。

なぜ段ボール箱なのか?

○使用を試してみた理由

  • カラカルはサバンナや半砂漠地帯に生息する小型ネコ科動物で、キツネやツチブタなどが捨てた穴や木のうろで繁殖・子育てをし、草に身を隠して鳥類や草食動物をハンティングすることで知られる。つまり、隠れることが本来の習性であり、それら習性ならば、そのような身を隠すことのできる環境が子育て中のカラカルのストレス軽減につながると予測した。
  • 段ボール箱は飼料用の野菜の搬入で、持続的に供給が可能で、購入費用が必要ない。
  • 使用後の後処理(ゴミ処理)が難しくない。
  • 簡単に取り換えることができる。
  • 掃除の手間が大幅に増加しない。                       など

 

○使用する段ボール箱の注意した点

  • 誤飲の恐れのある粘着テープや送り状、金属部品などが使用されていない。
  • 小型ネコ科動物が入ったり、乗ったりしてもすぐに壊れない。
  • 最初の使用時には行動が安定するまでよく観察する。

 

これらの点に注意して、段ボール箱(今回はバナナ用)をカラカルに使用しました。

最初は、見た事もない物だったこともあり、少し警戒する様子でしたが、時間の経過とともに、近づいて匂いを嗅ぎ、段ボール箱の中へと入っていきました。
最初に箱に入るまでの時間は、提示してから約1時間程度でした。

その後、箱に慣れてくると同時に、少しずつ観覧側のガラス面に寄せていくことで、来園者にとっても見やすくなり、立ち止まって親子の様子をじっくりと観察してくれる人数も増加しました。

(箱を逆にして、上に乗ったり、小さいときはその中に隠れて、顔を出したりします)

なぜ、カラカルがすんなりと段ボール箱を使用したのかについては、しっかりとした科学的な調査をしたわけではありませんので、今後の分析が必要かと思いますが、カラカルだけでなく小型ネコ科動物に広く応用できる可能性をひめた事例報告でした。

 

(萩原慎太郎)

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