ボルネオ島キナバタンガン川の動物とエコツーリズム

今回は、大谷洋介さんにマレーシアのフィールドサイトを紹介してもらいます!
きれいな写真とともに、ボルネオ島の動物たちやツーリズムの様子をお楽しみください。
  • 対象動物:テングザル(Nasalis larvatus)、ボルネオゾウ(Elephas maximus borneensis)、オランウータン(Pongo pygmaeus morio) 他
  • 場所:  キナバタンガン川流域 (マレーシア ボルネオ島)


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キナバタンガン川はマレーシア・ボルネオ島・サバ州の北東部に流れる川です。


標高差が小さいため河川は大きく蛇行する

ツーリズムは環境教育のうえで重要な役割を果たします。しかし同時に、動物に与えるストレスや踏圧など、少なからず弊害が存在することも事実です。

多くの野生動物は森林の中で人間と出会った場合、逃避行動を取ります。それは彼らにとって紛れもなくコストであり、ストレスであるはずです。また林内を人が頻繁に歩くことで土が踏み固められると、その場所の植物が枯死し土壌の露出・流出が起こりやすくなります。

動物や森林へのこのようなプレッシャーをいかに回避するかということが、ツーリズムにおける大きな課題となっています。ボルネオ島のキナバタンガン川とその支流で実施されているボートクルーズは、その問題に対する解答のひとつとなっています。

ここでは、観光客は主にボートの上から動物を観察します。林内を歩く観光客を減らすことで、踏圧を最小限にすることが出来ます。人間の目線が下がり、動物との間に水を挟むことで警戒心を抱かせにくくなることもボートクルーズの特徴です。

多くの観光客がボートクルーズに参加する

川沿いには食物や睡眠場所を求めて多くの動物が集まるため効率的に動物を発見することが可能です。また周辺地域でプランテーションが拡大する一方、同川流域の一部が保護区に指定されていることも多くの動物が観察できる理由のひとつです。

ここで見られる動物のうち、特筆すべきはボルネオゾウとテングザルの2種でしょう。

野生のゾウは非常に危険であるため通常近くからの観察は不可能だが、ボートからなら数mまで接近することができる

ボルネオゾウはアジアゾウの仲間で、その名の通りボルネオの固有亜種です。川沿いを数十キロの範囲で遊動していて、運が良ければ20-30頭以上の大集団に出会うことが出来ます。

彼らは草本の採食や渡渉のために川岸へやってきます。絶滅危険度の非常に高い動物ですが、プランテーションではゾウによる被害を防ぐために今でも違法に射殺されることがあります。

非常に特徴的な容姿を持つテングザル。ボルネオ島の固有種で、国内ではよこはま動物園で飼育されている。

目を引く姿でご存知の方も多いでしょう。大きな鼻とでっぷりとしたお腹で有名なテングザルです。テングザルは一頭のオスと複数のメスから成るハレムを形成し、複数のハレムが川沿いに集まって睡眠をとります。これはヒョウなどの捕食者に襲われた際、川に飛び込んで対岸へ逃げるためだとされています。

他にも希少種を含む多数の動物が観察できます。

オランウータン(左上)、ミナミブタオザル(左下)、サイチョウ(右)希少種を含む多くの種が見られる。
シカ(左上:イスラム圏であるこの地域では、昔から主にシカが獲られ、イノシシは保護されてきた。そのため今もイノシシが多く、シカの密度は低い。)、カニクイザル(左下)、イリエワニ(右上:最大6mになり、人が食べられることもある。)、カワウソ(右下)

環境保全と経済活動の矛盾を解消するうえで、ツーリズムは非常に重要な役割を果たします。しかしツーリズムが盛んになるにつれ、動物へ及ぼす影響を最小限にし、自然な姿を観察するための方策が必要になるでしょう。飼育下でも野外でも、動物を相手にするときに重要なことはそう変わらないのかもしれません。

川辺の森のようす。雨季には冠水することもある。

執筆:大谷洋介

京都大学霊長類研究所生態保全分野の大学院生

屋久島のニホンザルや、ボルネオ島のブタオザルなどを対象に、生態調査をおこなっている。

所属分野HP: http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/ecolcons/

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