ふれあい広場における来園者の影響は?

動物園の中には、来園者が動物を直接触ることができるふれあい広場を設けているところもたくさんあります。では、ふれあい広場で飼育されている動物たちは来園者のことをどのように捉えているのでしょうか?ふれあい広場における来園者の存在と来園者からの触れ合いが動物の行動に与える影響を調べた研究を紹介します。

研究対象となったのは、0.4haの広場で飼育されているヤギ15頭、リャマ16頭、ブタ(ベトナム・ポット・ベリード)6頭です。この広場では、来園者が動物に餌を与えることは禁じられていますが、自由に触ることができます。一部、動物だけが入ることができ、来園者は立ち入ることができないエリアも設けられています。

最初の研究では、来園者の存在の有無と、来園者の数が動物の行動に与える影響を調べるため、来園者数と動物の行動を平行して同時に記録しました。来園者の存在の有無はヤギとリャマの行動には影響を与えませんでした。一方、ブタの行動は影響を受け、来園者がいる時には同種との社会行動と地面に座っていることが減りましたが、その変化は小さいものでした。全体として、来園者の存在の有無は動物の行動に大きな影響を与えないことが分かりました。ふれあい広場における来園者の存在は飼育動物の福祉を損なうものではないと解釈できます。

また、来園者数が増えるにつれ、ヤギでは来園者と接触していることが増え、他種の近くにいることや同種と接触していることが減りました。リャマでは来園者と接触していることが増えたのみでした。ブタでは来園者と接触していることが増え、採食が減りました。これらのことから、来園者数の行動に与える影響は種ごとに違うことが分かりました。

2番目の研究では、来園者によるブラッシングが動物の行動に与える影響を調べました。来園者にブラシを与え動物をブラッシングした時と、ブラシを与えずにただ触れるだけの時の動物の行動をそれぞれ記録し、比較しました。ヤギとブタでは来園者がブラッシングをおこなうか否かによって行動は異なりませんでした。また、声を発したりブラシに体を預けたりするなどのブラッシングに対する好意的な反応を示すことよりも、ただじっとしている中立的な反応を示すことが多く観察されました。ヤギでは来園者の数が増えるとブラッシングに対して好意的な反応を示すことが減りましたが、ブタでは影響しませんでした。これらの結果から、来園者がブラッシングをおこなうことそれ自体はふれあい広場の動物にとってエンリッチメントとしては機能しないことが示唆されています。

この動物園のふれあい広場においては、来園者の存在が動物の福祉に悪影響を与えるものではない一方、触れ合い自体はエンリッチメントとしても機能していないということが示されました。もちろんこの結果は飼育環境や触れ合いの状況に左右されるものであるため、すべてのふれあい広場に当てはまるものとはいえません。また、3種類の動物の中でも種差があることが確認されており、動物種や個体によって人に対する反応性も異なることが考えられます。そのため、それぞれの飼育環境において、動物たちの状態を注意深く観察して検討することが必要です。

Ferrand, A., Hosey, G., & Buchanan-Smith, H. M. 2014. The visitor effect in petting zoo-housed animals: Aversive or enriching? Applied Animal Behaviour Science, 151, 117-127.

(小倉匡俊)

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