時間をかけて採食する:熊本市動植物園のチンパンジー舎の試み3

  • 採食エンリッチメント、認知エンリッチメント
  • 種名:チンパンジー(Pan troglodytes
  • 場所:熊本市動植物園
  • 目的:採食時間を延長する、チンパンジーの認知能力が発揮できる機会を増やす

熊本市動植物園のチンパンジーのエンリッチメントシリーズの最終回です。

前回までは高い場所で採食できるような工夫を紹介してきました(第一回:滑車を使った工夫・第二回:フルーツヌンチャク)。

 

今回は、採食時間を延ばすために、透明の塩ビパイプを用いた、どこでも設置可能なフィーダーを紹介します!

透明の塩ビパイプ(50㎜径と75㎜径)の両端に、スクリュー式キャップを装着してあります。30㎜または20㎜の大きさの穴を側面に開け、そこからチンパンジーが食べ物を取り出すことができるようになっています。中にはカットした果物や野菜、ピーナッツ、パンなどを入れます。チンパンジーは振ったり、指を使いながら中身を取り出して食べます。キャップが外れるので、洗浄なども簡単にできるような構造になっています。

これだけでも、採食時間を延ばすことができますが、夏場には中身の腐敗を防ぎ、さらに難易度を上げるために、凍らせた350mlのペットボトルを餌と一緒に入れることもあります。ニンジンをクサビ形に切ることで、ペットボトルが移動しずらくなり、振ってもなかなか落ちてこなくなります。

設置の仕方もさまざまです。

前回までに報告した通り、タワーの上に設置したり…

ロープにくくりつけたりもします。

 

他にも、チンパンジーが片側のフィーダーをひっぱると、もう片方のフィーダーが上にあがっていくような、連結パターンもあります。チンパンジーにとって、難易度の高いフィーダですが、おいしい餌のために、ああでもないこうでもない、とがんばっているようです。

塩ビパイプは比較的安価で応用範囲が広い素材です。今回のように透明パイプを使うことで中身が見えるようにすることもできますが、逆に灰色のパイプで視認性をなくしたりするなど、いろいろと試すこともできそうです。

今回の熊本市動植物園3回シリーズの記事は一旦ここで終了です。しかし、現在新たなフィーダーも開発中で、実際にはこれだけで終わりではありません!

もし熊本市動植物園をたずねた時は、ぜひこんなところにも注目してみてください。

 

(穴見浩志・山梨裕美)

熊本市動植物園のHP:http://www.ezooko.jp/

穴見浩志:熊本市動植物園でチンパンジーなどの動物飼育を担当。個人ブログはこちら➡http://d.hatena.ne.jp/higomaru777/

先頭に戻る